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世界初の全キャラAI声優アニメが生まれた舞台裏。
「これからの子供番組は、視聴者参加型の双方向であることがとても大切に」

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「れいぞうこのつけのすけ!」は、テレビアニメとして初めて全キャラクターの声をAI(コエステーション)にしたことで注目を集めました。また、「冷蔵庫の中を舞台におなじみの食材が大騒ぎする」という独特な設定の世界観と、音声合成によるキャラクターの「コエ(音声合成によるデジタルボイス)」が不思議とマッチしていることでも話題となりました。



その立ち上げ時の企画段階から担当され、キャラクターのセリフ音声の制作・編集は全てご自身でされたという小学館集英社プロダクションの千代島優さんに、舞台裏のストーリーを伺いました。


千代島 優さん
【テレビ東京系列にて月~金、あさ7時05分から放送の】子供向けバラエティ番組『おはスタ』プロデューサー。
株式会社小学館集英社プロダクション所属。
(コロナ禍により、オンラインにてインタビューに答えてくださいました)

1.キャラクターの声をAI(コエステーション)にするというアイディアはいつ生まれたのでしょうか?
   またなぜ、そのようにしようと思われたのですか?


2018年に私が立ち上げ時から参加していた、弊社の「AIを活用したビジネス・ノウハウの研究」を行うプロジェクトがきっかけでした。映像を扱う仕事なので映像に関するAI関連の情報を探していたところ、音声合成を使ってデジタルボイスをつくることのできるコエステーションに出会いました。
また、これもタイミングよく集英社さんとオリジナルキャラクターを立ち上げる企画を進行中だったので、ならばこの二つを掛け合わせてみよう!と思い付き、音声合成(コエステーション)×オリジナルキャラクターという方向で動き出しました。

名もない新キャラを世に出すために、何か一つひっかかりが欲しいと思い、「世界初の(全キャラ)AI声優」というキャッチがつけられるというねらいもありました。せっかく新しく立ち上げるものなので、何かインパクトのあるものをというところです。


ただ、一番最初から音声合成ありきで考えていたわけではなく、普段通り声優さんの声で作った場合の想定もしていました。しかしその場合、3つの点で音声合成の方にメリットがあります。

1つ目は、前述のとおりインパクトの大きさです。
2つ目は、コストの面です。声優さんの場合、出演をお願いする費用だけでなく、収録スタジオと編集スタジオをおさえる費用が別途かかり、それらは決して少額ではありません。音声合成の場合ももちろん利用料がかかりますが、それでも前者に比べればトータルで大きくコストがおさえられます。

さらに3つ目として、フレキシビリティの観点があります。声優さんなどの場合、その方のスケジュール上の制約がどうしても出てきてしまいます。しかし音声合成の場合は、そこのところの制約がないだけでなく、パソコンさえあればいつでもどこでも修正や調整を行うこともできます。

それら3点を考慮し、やはり音声合成を採用しようということになりました。


2.全キャラクターの声を音声合成にするというのはテレビ初の試みということで、企画当初、そのクオリティや子どもたちからの反応などに対す不安はありませんでしたか?
実際ツールを触ってみた印象や、作品が出来てみての印象はどうでしたか?


正直、あらゆる面で不安しかありませんでした。でも、新しい試みであり「世界初」であるということは、逆に正解は無いんだと割り切ってスタートさせました。

音声合成によるキャラクターの声を作るにあたっては、観た人がストレスなく受け取れるように自然であることが必要な一方で、ひっかかりを意識して、よい意味で違和感を持ってもらえるようにわざとたどたどしくしてみたり。その微妙なラインで調整を重ねていきました。

コエステーションは、感情表現や抑揚などのレベルをパラメーターで細かく調整していくことができ、音声を聞きながら、もう少しこのレベルをこれくらい上げてみよう・・いや、こっちを少し下げてみよう、といったようにかなり直感的に操作することが可能なので、とても使いやすかったです。正直、もっと難しいものなのかなと思ってました。出来上がった印象は、イメージしてたものと近かったですね。「いける!」と思いました

実際放送したところ、反応は正直「酷評」と「かわいい」の賛否がはっきり分かれたものとなりました。ネガティブなものとしては、「おはスタ」では声優さんがMCをしているのに、なぜこのアニメは声優さんではないのか?といったような、新しい試みがゆえの疑問の声などがありました。これは放送スタートから最終回まではっきり分かれていました。

ただ、キャラのビジュアルとたどたどしいコエが可愛いと言ってくださるご意見も多く、刺さるところに刺さったという手ごたえも感じられたのでよかったです。たとえば、視聴者のお母さんの方がキャラ弁を作って写真を送ってくださり、それをすぐにアニメのストーリーに反映してご紹介したり、作者の小栗先生が登場されるイベントを行った時に、参加してくださった小学生の子が手書きのイラストを先生にプレゼントしたりといったエピソードもあり、このキャラクターを愛してくださる方々がいらっしゃるのだと感じています。
↓↓↓視聴者から投稿いただいたキャラ弁をご紹介した回↓↓↓



3.「れいぞうこのつけのすけ!」では、一部のキャラクターの「コエ」の出演を視聴者の皆さまから募集するという企画を行いました。こちらも前例のない試みだったかと思いますが、やってみていかがでしたか?

本企画のように視聴者の方に何かしら作業をしていただいたうえで応募いただくものは手間がかかるため、応募数が少なくなる事が多いのですが、ふたを開けてみると予想を超えてかなり多くの応募をいただき驚きました。 それはやはり、コエステーションが自分のスマホ1つで簡単な操作でコエをつくれるというところの「手軽さ」や、直感的な操作で進んでいけば自分のコエが作れ、そのコエをいじれるという「面白さ」も影響したのだと感じています。

まだ小さい年齢のお子さまが、お母さんやお父さんと一緒にひとつひとつ読み上げをクリアしてコエを作り、レベルを上げていく様子を想像すると、そのプロセス自体を楽しんでいただけたのではないかなと思います。また、視聴者参加型のコンテンツは話題にはなっていますが現実まだあまりない中で、コエステのアプリと企画の目新しさのコラボがうまくいったのかなと思っています。
 
↓↓↓ご応募いただいたコエが出演した回↓↓↓

1. 観客のコエ 

2. ゲストキャラのコエ 


4.これからコエステーションを使ってやってみたいことなど、今後どのように活用していきたいか聞かせください。

「れいぞうこのつけのすけ!」は子供向けバラエティ番組「おはスタ」の一部で、私はそのプロデュースを行っているのですが、その番組でコエステーションを使ってできる面白そうなことはいろいろあります。
たとえば、おはスタの出演者の方の「コエ」をつくり、ゼッタイ本人が言わなそうなことをコエに言わせてみるだけでもおもしろそうです。そのほかにも、本人とそのコエで対談させるなど、リアル×AIのコラボレーションもおもしろそうです。

私は社会人になって最初に保育・教育に関わる現場を経験しました。そこでの経験が、子供たちや保護者の方々がどう受け取られるのかといったような肌感覚を培ったと感じているのですが、特にこれからの子供向け番組は情報を一方的に浴びせ続けるものではなく、視聴者参加型の双方向の番組であることがとても大切になってくると考えています

そういった意味でも、スマホで簡単にコエをつくれるコエステーションは参加型のプロジェクトをもっと気軽に、もっと簡単にしてくれるいろいろな可能性を持っていると思います。
視聴者のコエで番組中に天気予報やナレーションを読んでみたりなどの試みも、ぜひやってみたいですね。


5.これからコンテンツ作品で音声合成を活用していくことを検討中の方へ、メッセージやアドバイスがあればお願いします。

そうですね。音声合成は今のうちに手を付けておくと目新しさで話題をつくれると思います!
今はまだ実際に何ができてどういうことに適用できるのかといったイメージが浸透していない気がしますが、もう少し時間が経つと、恐らくいろんなところでそのポテンシャルに気づく業界や企業が増え、導入が一気に進みスタンダードなものになっていくという予感がしています
その時にシステムとして操作性も良くて簡単に使え、ユーザーも気軽に参加できる仕組みを持つコエステーションは業界スタンダードとして抜きんでてくるのではないかと期待しています。
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